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排尿障害

排尿障害とは

尿は、腎臓で作られる排泄物です。尿管を通過した尿は、膀胱へ運ばれます。これを「畜尿機能」と言います。そして膀胱内の容量が満たされると、今度は尿道を通過して体外へ出されます。この機能は「排尿機能」と呼ばれます。膀胱と尿道までの部分を「下部尿路」と呼び、男性の場合は前立腺も含まれています。これら2つの機能のうち片方、もしくは両方にトラブルがあることで排尿障害が現れます。

排尿障害になる原因

排尿障害は、排出障害と畜尿障害の2つに分けられます。排出障害は、排尿しようとしても上手く非尿出来ない状態で、畜尿障害は膀胱内に上手く尿をためられない状態を指します。
排出障害の原因としては、過活動膀胱や夜間頻尿、前立腺肥大症などがあり、畜尿障害の原因としては、過活動膀胱や腹圧性尿失禁、夜間頻尿などがあります。
排尿障害は、生活に支障をきたす障害です。心当たりのある方は、お気軽に当院までご相談ください。

排尿障害になる疾患について

前立腺肥大症

前立腺は、男性だけにある臓器です。膀胱のすぐ下にあり、尿道の周りを囲うように位置しています。また、精液の一部分の成分である前立腺液を作る役割も担っています。
前立腺は年齢とともに、肥大する傾向があります。前立腺が肥大するだけでしたら大した問題にはなりませんが、尿道や膀胱を圧迫してしまうと、頻尿や残尿感、排尿困難などの症状が出ます。この状態が前立腺肥大症です。発症した際は、治療が必要になります。

骨盤臓器脱

骨盤内の臓器(子宮・膀胱・直腸など)が、骨盤底の筋肉などでしっかりと支えられなくなった結果、膣や股から飛び出てしまう疾患です。女性に多く見られ、加齢や出産などによる筋力低下によって、臓器が支えきれなくなることで発症します。
また、膀胱が下がって出てしまうことを膀胱瘤と呼びます。膀胱瘤を発症すると、座るとボールの上に座っているように感じたり、頻尿などの排尿障害が起こったりします。

膀胱炎

尿道に入り込んだ細菌が膀胱の中で増殖し、炎症を起こす疾患です。女性は尿道が短い(3~4cm)ため、男性よりもかかりやすい傾向にあります。 細菌のほとんどは大腸菌という、元々身体に存在している菌です。発症した際は、抗菌剤を用いる薬物療法で治す必要があります。
膀胱炎になると、トイレに行きたくなったり、尿を出すときに痛みが走ったり、尿が残っているような感覚を感じたりします。また、尿が濁る、血尿が出るといった症状を伴うことがあります。発熱がある場合は膀胱炎ではなく、腎臓に炎症が広がって腎盂腎炎まで移行している可能性があります。その場合は、放っておかずに当院へご相談ください。

尿路結石

尿の成分(シュウ酸や尿酸など)とカルシウムが結びついて結晶化し、結石が作られます。結石の多くは腎臓に発生し、少しずつ尿路を通過してから、尿と一緒に体外へ出ていきます。腎臓や膀胱には一定程度の空白があるため、結石ができても症状があまり目立ちません。しかし、尿管のような狭い所を通る時は、通過時に粘膜に傷ができたり、腎臓の出口などを塞いだりしてしまいます。それにより激痛が走ったり、尿が出なくなったり、水腎症になったりすることがあります。 膀胱の結石は、腎臓から降りてきたものもあれば、排尿障害によって膀胱内に尿が長期間留まった結果、できたものもあります。

膀胱がん

膀胱内は、尿路上皮という特別な細胞でできた粘膜で覆われています。膀胱がんは、この細胞ががんになったもので、高齢男性に多く見られる疾患です。また、喫煙習慣が発症に関与しているのではないかと考えられています。
発症したばかりの段階では無症状でいることが多く、血尿をきっかけに見つかるケースが多いです。膀胱がんの80%は、がん細胞が膀胱の上皮だけに留まっているものとされており、筋層にまで至っていない非浸潤性のものです。この場合、悪性度はそこまで高くありませんが、中には筋層にまで浸潤しているものもあります(浸潤型)。

排尿障害の検査

排尿障害を引き起こしている疾患に合わせて、治療法を選択します。まずは尿検査や血液検査、内視鏡検査(膀胱鏡)などの中から、必要だと判断した検査を受けていただきます。

排尿障害の治療法

原因疾患が分かり次第、それに合った治療を始めます。どういった症状があるのかを詳しく把握するために、次回の受診日までの2~3日間、トイレに行った時間や量を記録していただきます。
泌尿器科の疾患の場合、減量や禁煙、水分摂取量の調整といった生活の見直しをはじめ、骨盤底筋を強くする体操や膀胱トレーニングなどの理学療法を行います。また、尿を溜める機能に異常がある場合は抗コリン薬などを、尿を出す機能に異常がある場合は、PDE5阻害薬やα1受容体遮断薬などの薬を処方します。
尿が出なかったり、出るはずなのに尿意を感じなかったりする場合は、尿道にカテーテルを入れて排尿を促します。症状が良くならない場合は、医師のアドバイスを受けながらご自身でカテーテル療法を行ったり、手術が検討されます。

排尿障害があった時の対処法

トイレに行くタイミングを決めて、その通りに排尿する

がんの手術などを受けていただいた後は、膀胱に尿が溜まっていても「トイレに行きたい」と思わなくなることがあります。そのような場合は、尿意を感じていなくても決まった時間にトイレへ行く習慣をつけておくことをお勧めします。
トイレに行く時間は約2~4時間おきを目安とされていますが、患者様によって適したタイミングは異なりますので、医者の相談を受けた上で時間を決めましょう。

お腹の下が張ったタイミングでトイレに行く

「トイレに行きたい」と思わなくても、下腹部が重く感じる、膨らんでいるように感じるといったサインがある場合は、尿意のサインとなります。
最初は気付きにくいのですが、焦らずゆっくり練習して、この合図を感じられるようにしましょう。

腹圧をかけて排尿するなど、ご自身に合った排尿方法を試す

尿がどうしても出ない場合は、次のような方法を試してみて、ご自身に合うものを探してください。

  • シャワートイレの水や、ぬるめのお湯で陰部を温める
  • リラックスできるように、トイレ内の環境を整える
  • 深呼吸してお腹を膨らませながら下腹部をゆっくり押し、排便時のように肛門周囲に意識を向けながら尿を出す

など

便秘を解消させる

便秘になると腹部が膨らみやすくなるため、膀胱に圧力がかかりやすくなります。それにより、頻尿になるケースもあります。さらに、便秘がひどくなると、尿路まで塞がれてしまうので、尿が出にくくなる可能性が高くなります。
便秘は他の疾患の原因にもなるため、生活の見直しをして便秘を解消させる必要があります。まずは、決まった時間にトイレに行く、野菜や果物などの食物繊維をたくさん食べる、水分をしっかり摂るなどを心がけましょう。

排尿日誌を書く

排尿記録には、トイレに行った時間や尿量などを毎日書いておきましょう。これらの情報は、患者様の状態を正しく理解するための重要な情報になります。
記録する内容につきましては、患者様によって違いますので、医師にご相談ください。

周りの方はできる限り、患者様をサポートする

尿意が感じにくくなることで、決められた時間になってもトイレに行くことを忘れてしまうことがあります。また、排尿日誌をつける習慣を身に付けられないといった悩みが出てくる可能性もあります。
患者様の気持ちに寄り添い、さりげなく周りからサポートして、治療を続けていくことが大事です。