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精索静脈瘤

精索静脈瘤とは?

精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)は、精巣から心臓に戻る静脈が拡張し、瘤状に膨らんだ状態を指します。これは静脈弁が正常に機能しないため、血液が逆流して溜まってしまうことが原因です。精索静脈瘤は、陰嚢内の精巣静脈が拡張し、瘤のように膨らんだ状態を呈し、特に左側の精巣で多く見られます。なぜなら、左側の精巣静脈は腎静脈に直接つながっているため、右側よりも圧力がかかりやすい構造をしているからです。
精索静脈瘤は多くの場合、症状が軽微で、初期段階では自覚症状がないことが多いです。しかし、進行すると陰嚢内に重さや鈍痛を感じることがあり、長時間立っていると悪化することがあります。また、痛みが日常生活に支障をきたす場合や、生殖能力に影響を及ぼすことが懸念される場合は、治療が推奨されます。一般的に思春期以降の男性に発生しやすく、30歳未満の男性での発症率が高いです。精索静脈瘤の診断と治療は泌尿器科の専門医が担当し、症状や病状の進行度に応じて適切な対応が求められます。

 

 

 

 

 

 

 

精索静脈瘤の種類

精索静脈瘤は、発生部位や原因に応じていくつかの種類に分類されます。最も一般的な分類は、片側性と両側性です。片側性の場合は主に左側に発生し、両側性の場合は左右両方の精巣に影響を及ぼします。片側性の精索静脈瘤は左側に多く見られ、その割合は90%にも達します。これは前述のように、左精巣静脈が腎静脈に接続しているためです。一方、右側または両側に発生する精索静脈瘤はまれであり、右側の発生は異常がある場合を示唆することが多いです。

さらに、精索静脈瘤は原発性と続発性に分類されます。原発性の精索静脈瘤は、先天的または成長過程で静脈の弁が機能不全を起こすことによって発生します。一方、続発性の精索静脈瘤は、腹部や骨盤内の腫瘍などの外的要因が原因で静脈の流れが妨げられることにより生じます。続発性の精索静脈瘤はまれですが、原因となる病気が重篤であることもあるため、精密検査が必要です。

発症頻度と統計

精索静脈瘤の発症率は男性全体の約15%に見られますが、不妊症を訴える男性の中では約40%に及びます。このため、精索静脈瘤は男性不妊の主要な原因の一つとされています。また、思春期の男子においては、その発症率は15歳前後で特に高く、20歳以下の若年層に多く見られることが特徴です。
地域別の発症率では、特に西洋諸国において高い傾向があり、生活習慣や食生活の違いが一因とされています。しかし、東アジアや南アジアでもその発症率は少なくなく、精索静脈瘤は全世界的に見られる病態です。統計的には、右側の精索静脈瘤の発生率は非常に低く、ほとんどが左側に集中しています。これにより、左側の精索静脈瘤が診断された場合、特に続発性の疑いがある場合は注意深い検査が必要とされます。
また、年齢別に見ても30歳を過ぎると発症率はやや減少する傾向にあり、これは静脈の弾性が年齢とともに変化し、症状が安定するためと考えられます。それでもなお、40代以降でも発症しうるため、特に中年以降で新たに症状が現れた場合には、迅速な診断と対応が求められます。

※1 ヨーロッパ泌尿器科学会:男性不妊診療ガイドライン参照

精索静脈瘤はすぐに大事に至るわけでもないため、適切な対策を取れば改善できる症状です。少しでも、ご不安な方は、高知泌尿器科かさはらクリニックにまずは診察にお越しください。

精索静脈瘤の症状

・陰嚢が痛い、重みを感じる
・横になると陰嚢の痛みが引く
・陰嚢を触るとしこりや膨らんでいる感じがある
・上記の違和感が夕方や運動後にいつも強くなる

上記のような症状がある場合は、精索静脈瘤かもしれません。しかし、精索静脈瘤は無症状の場合も少なくありません。多くの精索静脈瘤は、無症状のまま進行することがあり、健康診断や不妊検査で初めて発見されることもあります。しかし、進行すると精巣の機能に影響を与え、不妊症の原因となることがあります。また、陰嚢内の温度が上昇することで精子の生産や運動能力が低下し、生殖能力に悪影響を及ぼすことも報告されています。
進行度に応じて症状は異なり、軽度のものはほとんど症状がないか軽微ですが、中度や重度になると陰嚢の腫れや目に見える静脈の膨張が観察されることがあります。これに伴い、精巣の萎縮や硬化が見られることもあり、痛みや不快感が日常生活に支障をきたすことが増えていきます。こうした症状が悪化する前に適切な治療を受けることが重要です。

重症度による症状の違い

精索静脈瘤の重症度は、臨床的に1度、2度、3度の3つの段階に分類されます。

1度は最も軽度で、立位でお腹に力をいれたときに、静脈の拡張を触知することができる状態です。この段階では、ほとんど自覚症状がないことが多く、痛みも感じないことが一般的です。

2度は、立位で触診、視診にて容易に静脈の拡張を確認できる状態です。痛みや不快感が出始め、運動後や長時間の立位で症状が悪化することがあります。この段階での早期治療は、進行を抑え、症状を軽減するために有効です。

3度になると、静脈瘤が視覚的に明確に認識でき、陰嚢全体が腫れているように見えることがあります。重い痛みや圧迫感が日常的に感じられ、立位時に著しく悪化します。この段階では、精巣の萎縮が進み、精子の質と量にも大きな影響を及ぼすため、積極的な治療が求められます。進行度が高いほど、治療が遅れると生殖機能への影響が大きくなるため、適切な診断と治療が必要です。

精索静脈瘤の原因

精索静脈瘤の発生メカニズムは、静脈の逆流による血液の停滞が主な原因です。通常、静脈の中には血液の逆流を防ぐための弁が存在しますが、精索静脈瘤の患者ではこの弁の機能が正常でない場合があります。その結果、静脈の中で血液が逆流し、血管が拡張して瘤状になります。この逆流は、重力の影響で特に立位や座位で顕著になりやすく、精索静脈瘤の症状が悪化する原因となります。
また、静脈瘤は血管の弾性が低下することも一因です。静脈の壁が弱くなることで、血流の圧力に耐えられずに拡張することがあります。精索静脈瘤が体の左側に多く発生する理由の一つは、左精巣静脈が腎静脈に直接接続していることです。これにより、左側の静脈圧が上昇しやすくなり、逆流が生じやすくなります。こうしたメカニズムは、静脈内圧の変動や体位の影響など複数の要因が複雑に絡み合って発生するため、理解しておくことが重要です。

静脈の弁機能不全と静脈圧の上昇

精索静脈瘤の主な原因は、静脈の弁機能不全と静脈圧の上昇です。正常な静脈には血液が逆流しないように働く弁がありますが、精索静脈瘤がある場合、この弁が正常に働かないため、血液が逆流して静脈内に溜まり、拡張します。また、解剖学的に左側の精巣静脈が腎静脈に垂直に接続しているため、左側に静脈瘤ができやすい構造的な要因もあります。

遺伝的要因

家族歴がある場合、精索静脈瘤を発症するリスクが高くなることが知られています。また、長時間立ち仕事をする、重い物を頻繁に持ち上げる、過度な運動を行うなどの生活習慣もリスク要因とされています。これらの行動は静脈圧を高める可能性があり、精索静脈瘤の発生を促進することがあります。

その他の要因

他にも、精索静脈瘤は高血圧や静脈の脆弱性を引き起こす疾患とも関連していることがあります。例えば、肝疾患や腎臓病が静脈瘤の形成に影響を与えることが報告されています。また、続発性の場合は、腹腔内の腫瘍や腎静脈の圧迫などが原因となることがあり、こうした背景には複雑な病理が絡むことが多いです。

精索静脈瘤の診断方法と検査の流れ

精索静脈瘤の診断は、まずは問診と視診・触診から始まります。診察では、立位と臥位の両方で陰嚢の状態を確認し、静脈の拡張の有無をチェックします。精索静脈瘤は立位で症状が顕著になるため、患者には立った状態で検査を受けるように指示されることが多いです。

また、診断を確定するために超音波検査が行われることがあります。超音波検査は、静脈の拡張状態や逆流の有無を正確に評価するための非侵襲的な方法であり、静脈の血流パターンを確認することができます。特に、ドップラー超音波を使用すると、血液の逆流が視覚化され、精索静脈瘤の程度をより詳細に評価することができます。

精密検査が必要な場合は、CTスキャンやMRIなどの画像診断が行われることもあります。特に、続発性の精索静脈瘤が疑われる場合や、腫瘍による圧迫が疑われる場合は、これらの画像診断が有用です。また、精液検査を通じて精子の質と量を評価することも、精索静脈瘤が生殖機能に与える影響を評価するための重要な手段です。

当院では、精液検査とエコー検査によって精索静脈瘤のスクリーニング検査を行います。精索静脈瘤の疑いがある方は、より高次の精密検査ができる医療機関へご紹介いたします。

精索静脈瘤の治療法

精索静脈瘤の治療は、症状の重さや患者の希望、将来的な生殖能力への影響を考慮して選択されます。一般的に、無症状で軽度の場合は治療が不要な場合もありますが、痛みや不快感がある場合や不妊症に関連している場合には、積極的な治療が推奨されます。

保存療法としては、痛みの管理が主な目的となります。長時間の立位や激しい運動を避けることが症状の悪化を防ぐために推奨されます。この方法は、軽度の症状に対して効果的であり、手術を避けたい場合の選択肢として用いられます。

一方、手術療法は、症状が中度から重度の場合や、不妊症の原因と考えられる場合に検討されます。手術にはいくつかの方法がありますが、最も一般的なのは「顕微鏡下静脈結紮術(マイクロサージャリー)」です。これは、顕微鏡を用いて拡張した静脈を結紮し、逆流を防ぐ方法です。また、腹腔鏡下手術や開腹手術も行われることがありますが、近年では侵襲が少ない腹腔鏡下手術が増えてきています。手術の選択は、医師と患者との相談の上で決定され、手術後は定期的な経過観察が必要です。

手術の種類と選択

精索静脈瘤の手術にはいくつかの種類があり、患者の症状や希望、医療機関の設備などに応じて最適な方法が選ばれます。顕微鏡下静脈結紮術(マイクロサージャリー)は、最も精度の高い手術方法とされ、精索内の拡張した静脈を顕微鏡を使って結紮します。これは、静脈を精密に観察しながら手術を行うため、他の神経や血管を傷つけるリスクが低く、術後の合併症も少ないのが特徴です。

腹腔鏡下手術は、少し大きめの切開を行い、内視鏡を用いて精索静脈を結紮する方法です。この手術は、入院期間が短く、回復も比較的早いため、多くの患者にとって負担が少ないという利点があります。しかし、顕微鏡下手術と比べると、術後の再発率がやや高い傾向があります。

開腹手術は、より侵襲的な手術方法で、主に他の手術方法が適用できない場合や複雑なケースに対して行われます。開腹手術は、術後の回復が長くなる傾向があり、現在ではあまり一般的ではありません。手術の選択は、医師の経験と患者の希望、具体的な病状によって決定されます。

いずれの治療法を選ぶ場合でも、治療後の経過観察と再発防止のための生活指導は欠かせません。治療によって症状が緩和されても、再び悪化する可能性はゼロではないため、医師の指導のもとで継続的な管理が必要です。

 

治療後のケアと経過観察

精索静脈瘤の手術後は、適切なケアと経過観察が重要です。手術後のケアには、手術部位の清潔を保つことや、激しい運動を避けること、無理な体勢を取らないことが含まれます。また、術後数日は安静に過ごすことが推奨され、徐々に通常の活動に戻ることが一般的です。痛みや腫れが残る場合がありますが、これは通常数日から数週間で改善されます。

経過観察は、術後の合併症の早期発見や再発防止のために欠かせません。術後の定期検診では、視診や触診、必要に応じて超音波検査などが行われ、静脈の状態や精巣の機能を確認します。特に、再発のリスクがある場合は、定期的な経過観察が長期にわたって行われることがあります。

また、手術後の妊娠率の向上を期待している場合は、精液検査を行い、精子の質や量がどの程度改善しているかを評価します。治療後の経過は個々の症例によって異なるため、医師と密に連携をとり、適切なフォローアップを受けることが推奨されます。

精索静脈瘤と男性不妊症

精索静脈瘤は、不妊症の主要な原因の一つとされています。これは、精索静脈瘤が陰嚢内の温度を上昇させ、精子の生産や運動能力に悪影響を与えるためです。正常な精子の生成には、体温よりも低い温度が必要であり、精索静脈瘤があると陰嚢内の温度が上昇してしまいます。これにより、精子の質が低下し、受精能力が損なわれることがあります。

また、精索静脈瘤は精子のDNA損傷率を増加させることも報告されています。DNA損傷が多い精子は、受精した後の胚の発育に悪影響を与える可能性があり、これが不妊症の原因の一つとなります。さらに、精索静脈瘤は精子の運動能力を低下させ、精子の数を減少させることもあります。これらの影響により、精索静脈瘤は男性不妊の一因と考えられています。

治療によって精索静脈瘤を改善することで、精子の質や量が向上し、妊娠率が上がることが期待されます。研究によると、精索静脈瘤の手術後に精子の質が改善し、妊娠率が向上するケースが多いです。ただし、すべての症例で治療が成功するわけではなく、個々の症状や精索静脈瘤の進行度、その他の要因に左右されるため、治療の効果を慎重に評価する必要があります。

治療による改善効果と予防

精索静脈瘤の治療は、主に手術によって行われ、その効果は不妊治療においても注目されています。手術後、精子の質や量、運動能力が改善されることが多く、これにより自然妊娠率の向上が期待されます。具体的には、手術後6ヶ月から1年以内に精液の改善が見られることが一般的で、これに伴い、妊娠率も徐々に上がる傾向があります。

また、精索静脈瘤の治療によって、男性側の生殖機能に与える影響が低減されるだけでなく、パートナーの不妊治療の成功率も高まることが報告されています。例えば、体外受精や人工授精などの補助生殖技術と併用することで、より高い妊娠成功率が期待できることがあります。治療による改善効果は、個々の症例により異なりますが、多くの場合、精子の運動率や形態が正常化することが観察されています。

ただし、すべての患者が手術によって完全に症状が改善するわけではなく、一部では精子の質の改善が見られない場合もあります。そのため、治療の決定にあたっては、医師と十分な相談を行い、期待される効果やリスクについて理解することが重要です。また、治療後も定期的な経過観察を行い、精索静脈瘤の再発や他の不妊要因の早期発見に努めることが推奨されます。

 

予防策

精索静脈瘤の発症を完全に防ぐことは難しいですが、いくつかの予防策を実践することでリスクを減少させることが可能です。まず、健康的な生活習慣を維持することが重要です。喫煙や過度の飲酒は血管の健康に悪影響を及ぼし、静脈瘤のリスクを高めるため、これらを控えることが推奨されます。また、適度な運動を取り入れることも効果的です。過度な運動は逆に精索静脈瘤のリスクを増大させる可能性があるため、無理のない範囲での運動を心がけましょう。

さらに、便秘を防ぐためにバランスの取れた食事を心がけることも予防に役立ちます。便秘が続くと腹圧が上昇し、これが精索静脈に負担をかけ、瘤の発生を助長する可能性があります。繊維質の多い食品を摂取し、水分を十分に補給することで、便通を整え、腹圧の上昇を防ぐことができます。

加えて、長時間の立ち仕事や座りっぱなしの姿勢も精索静脈瘤のリスクを高める要因となるため、適度に休憩を取り、血流を促進することが大切です。例えば、仕事中に定期的に足を動かしたり、休憩時間に軽いストレッチを行うなどして、血液循環を良好に保つことが予防につながります。これらの生活習慣の見直しと改善が、精索静脈瘤の予防に大いに役立つでしょう。

よくある質問

精索静脈瘤は自然に治るのか?
精索静脈瘤は自然に治ることはほとんどありません。軽度のものであれば、症状が進行せずに安定することはありますが、多くの場合は治療が必要です。特に痛みがある場合や不妊症に影響を与えている場合は、医師の診察と適切な治療が求められます。

治療の費用はどのくらいかかるか?
治療の費用は、手術の種類や医療機関によって異なります。手術の方法や医療施設によって費用が変動するため、事前に詳細を確認することが重要です。

再発する可能性はあるのか?
精索静脈瘤は手術後に再発する可能性がありますが、再発率は低いです。再発のリスクを減らすためには、手術後の適切なケアと定期的なフォローアップが重要です。特に、術後の経過観察を怠らず、症状の再発や悪化に早期に対応することが求められます。

手術後の回復期間は?
手術後の回復期間は、手術の種類や患者の状態によって異なりますが、一般的には数日から数週間で日常生活に戻ることができます。術後は激しい運動を避け、無理のない範囲で徐々に日常の活動を再開することが推奨されます。

精索静脈瘤は不妊症の唯一の原因か?
精索静脈瘤は不妊症の原因の一つですが、唯一の原因ではありません。男性不妊には他にもさまざまな要因が関与しているため、精索静脈瘤の治療と併せて、包括的な不妊検査と診断が必要です。医師と相談し、最適な治療プランを立てることが重要です。

治療を受けるべきかどうかの判断基準は?
治療を受けるかどうかの判断は、症状の重さや生殖能力への影響、生活の質への影響を考慮して行います。痛みがある場合や、不妊症が深刻な場合には治療を受けることが推奨されます。医師と十分に相談し、自身の状態に適した治療を選択することが大切です。

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