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前立腺肥大症

前立腺肥大症とは?

前立腺肥大症とは、男性の骨盤内にある小さな器官である「前立腺」が年齢とともに大きくなり、排尿にさまざまな問題を引き起こす良性の疾患です。前立腺は精液の一部を構成する前立腺液を分泌する器官であり、通常はクルミほどの大きさをしています。しかし、この前立腺が中高年以降に肥大すると、尿道を圧迫して排尿障害を起こすようになります。これは決して悪性のがんではありませんが、生活の質を著しく低下させる可能性があるため、放置せずに早期の対応が必要です。


この病気は特に50歳以上の男性に多く見られ、60代から70代になるとその頻度はさらに高まります。前立腺が肥大してくると、初期の段階ではあまり目立った症状がない場合もありますが、進行すると排尿に関する不快感や夜間の頻尿、残尿感、そして尿が出にくくなるなどの明確な兆候が現れます。そのため、前立腺肥大症は、加齢と共に避けがたい身体の変化として多くの男性が経験する可能性のあるものと言えるでしょう。

また、この疾患は放置してしまうと膀胱や腎臓にまで悪影響を及ぼすことがあり、慢性的な尿閉(尿が出ない状態)や尿路感染症、さらには膀胱機能の低下といった二次的な問題を引き起こす恐れがあります。したがって、早期の診断と適切な管理が非常に重要です。
前立腺肥大症は恥ずかしいものではなく、適切な対策を取れば改善できる症状です。少しでも、ご不安な方は、高知泌尿器科かさはらクリニックにまずは診察にお越しください。

前立腺の役割と構造

前立腺の構造

前立腺の大きさは成人男性で約20グラム、直径は3センチ前後で、柔らかく弾力のある組織でできています。若年層ではその大きさは安定していますが、40代を過ぎる頃からホルモンの影響により徐々に大きくなっていきます。この肥大は、特に尿道の通り道に沿って起こるため、前立腺の肥大が進行すると自然に尿道が狭くなり、排尿に支障をきたすことになります。

さらに、前立腺は外側にある「外腺」と、尿道を取り囲む「内腺」の二層構造を持っており、前立腺肥大症は主に内腺に起こる病変です。内腺が大きくなることで尿道を圧迫し、さまざまな排尿障害を引き起こすのです。このような解剖学的特徴を理解することで、なぜ前立腺肥大症が排尿に深刻な影響を及ぼすのかがよく分かります。

また、前立腺は神経や血管が豊富に分布していることから、炎症や肥大による不快感が精神的なストレスにも繋がりやすい臓器です。そのため、症状が進行していくと肉体的だけでなく心理的な負担も大きくなっていきます。前立腺の役割と構造を理解することは、前立腺肥大症を適切に予防し、治療を受けるうえでも非常に重要な第一歩となります。

前立腺の役割

前立腺は男性特有の生殖器の一部であり、泌尿器系と生殖器系の交差点に位置する極めて重要な臓器です。膀胱のすぐ下にあり、尿道の周囲を取り巻くように存在するこの器官は、主に前立腺液と呼ばれる成分を分泌する機能を持っています。この前立腺液は精液の一部を構成し、精子の運動性や生存性を高める働きがあるため、男性の生殖能力にとって不可欠な存在です。

前立腺肥大症の症状

前立腺肥大症の症状は、前立腺が肥大し尿道を圧迫することで起こる排尿障害を中心に、非常に多岐にわたります。多くの男性が経験する症状としてまず挙げられるのは、尿の出が悪くなる、つまり排尿開始に時間がかかる、勢いが弱くなる、途中で尿が途切れるといった排尿困難です。これらは尿道の内腔が狭まることで起こる物理的な問題に起因しており、加齢とともに進行していく特徴があります。

「頻尿」と「夜間頻尿」

特に日常生活において支障をきたす症状です。頻尿とは、日中何度もトイレに行かなければならない状態を指し、日常の活動を妨げる大きなストレス要因となります。夜間頻尿は、夜中に1回以上目覚めて排尿する状態を指し、これが繰り返されることで睡眠の質が著しく低下し、慢性的な疲労や集中力の低下、精神的ストレスを引き起こすことにも繋がります。

「残尿感」や「尿意切迫感」

残尿感とは、排尿後にも尿が残っているような不快感がある状態であり、しばしば再びトイレに行きたくなる

原因となります。尿意切迫感は、突然強い尿意に襲われて我慢できなくなる症状で、外出先などで大きな不安材料となります。

尿閉

さらに症状が進行すると尿がまったく出なくなる「尿閉」や、膀胱の過剰な収縮によって痛みや違和感を伴うこともあります。これらの症状は単なる老化現象と見過ごされがちですが、放置してしまうと、膀胱機能の低下や腎臓への負担、尿路感染症など深刻な合併症へと発展するリスクもあるため、非常に注意が必要です。

前立腺肥大症の症状は個人差が大きく、初期には軽微であることも少なくありません。しかし、放置すれば確実に進行し、生活の質を大きく損なう可能性があるため、違和感を覚えた時点での受診と早期の対策が最も重要です。泌尿器科専門医による詳細な評価を受けることで、原因を明確にし、的確な治療へとつなげることができるでしょう。

前立腺肥大症の原因

前立腺肥大症の原因の中心は、加齢に伴う男性ホルモンの変化にあります。特にジヒドロテストステロン(DHT)と呼ばれる物質が前立腺の細胞成長を刺激することで、肥大が進行するとされています。年齢を重ねるごとにホルモンバランスが変化し、このDHTの影響が前立腺組織に顕著に現れるようになるのです。

前立腺肥大症には生活習慣病との関係

肥満、高血圧、高血糖、そして脂質異常症といった現代人に多い疾患は、前立腺の健康にも悪影響を与える可能性があるとされます。一方で、喫煙やアルコールの摂取、性生活の頻度などとの直接的な関係は、現時点では明確には示されていませんが、過度な嗜好品の摂取は全身の健康に悪影響を及ぼすため、注意が必要です。

遺伝的要因

遺伝的な要因も無視できず、家族に前立腺肥大の既往がある場合は、自身のリスクも高くなる傾向があります。前立腺肥大はただの老化現象ではなく、さまざまな因子が重なり合って起こる複雑な病態であることを理解し、早めの対応を心がけるべきです。

前立腺肥大症の診断方法と検査の流れ

前立腺肥大症の診断においては、泌尿器科での専門的な評価が必要です。診察ではまず、患者が自覚している症状の程度や頻度について詳しく聞き取る問診が行われます。次に、尿検査で炎症や感染の有無を確認し、尿の勢いを測る「尿流測定」や、排尿後にどれだけ尿が残っているかを確認する「残尿測定」などが実施されます。

PSA(前立腺特異抗原)検査

さらに血液検査によってPSA(前立腺特異抗原)の値を測定することも必須です。これは前立腺がんとの鑑別をするうえで極めて重要な検査であり、肥大症との区別を明確にする助けとなります。加えて、前立腺の大きさや形状を確認するために超音波検査も行われます。これらの検査はすべて痛みの少ない非侵襲的な方法であり、初診から短時間で実施可能です。

これらのデータをもとに、医師は患者の状態に応じた治療方針を立てていきます。軽度の症状であれば経過観察となることもありますが、症状が生活に影響を与えている場合には薬物治療が選択されるのが一般的です。なお、尿閉や膀胱結石などの合併症が見られる場合には、手術による治療も検討されます。

前立腺肥大症の治療法

前立腺肥大症の治療には、大きく分けて「薬物療法」と「手術療法」の2つの方法があります。症状の程度や前立腺の肥大の進行具合、患者の年齢や健康状態、生活スタイルなどを総合的に判断して、最も適した治療方針が選ばれます。

初期段階や中等度の症状の治療

まず薬物療法が検討されることが一般的です。薬物療法には2種類の主な薬剤があり、それぞれ異なる作用機序を持っています。ひとつは、前立腺内の平滑筋を弛緩させて尿道への圧迫を軽減し、尿の流れを改善するタイプの薬剤です。これは即効性があり、比較的早い段階で症状の緩和が期待できます。もうひとつは、前立腺自体を徐々に小さくする薬剤で、ジヒドロテストステロン(DHT)の生成を抑えることによって、前立腺の体積を縮小させていくものです。こちらは作用が現れるまでに数ヶ月を要することが多いですが、長期的な症状の改善に役立ちます。

どちらの薬剤を選択するかは、前立腺の大きさ、患者の希望、他の疾患との兼ね合いなどを考慮して決定されます。場合によっては、これら2種類の薬剤を併用して治療効果を高めることもあります。副作用としては、めまいや低血圧、性機能への影響が報告されているため、処方後の経過観察も重要です。

外科的な治療

一方、薬物療法では改善が見込めない、あるいは尿閉や膀胱結石、膀胱機能の著しい低下などの合併症がすでに存在している場合には、外科的な治療が選択肢となります。最も一般的な手術は経尿道的前立腺切除術(TURP)であり、尿道から器具を挿入して前立腺の一部を切除し、尿道の通り道を確保する方法です。最近では、より侵襲の少ないミニマルインベイシブな治療法も開発されており、症状や身体への負担を軽減できる新しい選択肢として注目されています。

いずれの治療法を選ぶ場合でも、治療後の経過観察と再発防止のための生活指導は欠かせません。治療によって症状が緩和されても、再び悪化する可能性はゼロではないため、医師の指導のもとで継続的な管理が必要です。

治療を選ぶ際の注意点と医師との相談ポイント

前立腺肥大症の治療法は多岐にわたり、選択肢が豊富であるがゆえに、どの治療を選ぶべきかで迷う方も少なくありません。そのため、治療の選択に際しては、症状の程度、前立腺の大きさ、患者様の年齢、既往歴、生活スタイルなどを総合的に考慮する必要があります。加えて、ご本人がどのような生活の質(QOL)を重視しているのかという点も、極めて重要な判断材料となります。

薬物療法の場合

薬物療法を選択する場合には、まず自身の症状がどのようなタイプに分類されるかを正確に把握することが大切です。たとえば、尿の勢いが弱く排出に時間がかかる場合は、前立腺の平滑筋を緩める薬剤が適している可能性があります。一方で、前立腺の肥大が顕著で尿道の物理的な閉塞が強いと診断されれば、前立腺の体積を縮小させる薬の方が効果的かもしれません。このように、薬の選択には専門的な知見が求められるため、自己判断ではなく、必ず泌尿器科専門医の指導を仰ぐべきです。

手術

また、手術を選択する際にも注意すべき点は少なくありません。手術には一時的な尿失禁や性機能への影響といった副作用のリスクが存在するため、あらかじめ医師と十分な相談を行い、自身が納得できる形で治療に臨むことが求められます。特に高齢の患者や持病を抱えている場合は、手術の適応が慎重に検討される必要があります。

加えて、治療後のフォローアップ体制が整っているかどうかも重要なポイントです。治療を行って終わりではなく、経過観察や再発防止のための指導が適切に行われることが、長期的な健康維持に直結します。もし複数の治療機関で迷っているのであれば、カウンセリングを受けてそれぞれの医師の説明を比較し、自分にとって信頼できる医師を見つけることも一案です。

結局のところ、最も大切なのは患者本人が自分の体に関心を持ち、医療との信頼関係を築いたうえで納得のいく治療を選ぶことです。前立腺肥大症の治療は一過性のものではなく、今後の生活を見据えた選択が求められるからこそ、冷静かつ慎重な対応が求められます。

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